皮膚科とは

皮膚に異常が見受けられる場合に診察、検査、治療を行う診療科が皮膚科です。肉眼で確認できる体の表面から、爪・毛髪まで診療の対象となります。

皮膚科に来院される患者様は肌に赤いブツブツができた、かゆい、かぶれた、虫に刺された、日焼けが痛いなど、何らかの皮膚症状を訴えて来院されることが多いのですが、体内の異常が皮膚症状として現れるということもあります。診察の結果、入院加療が必要、より高度な検査や治療が必要と判断された場合は、当院提携の医療機関を紹介いたします。

当診療科で対応する、主な皮膚の症状、疾患

湿疹(皮膚炎)

湿疹(皮膚炎)とは、皮膚に炎症を起こす病気の総称です。かゆみや赤み、水ぶくれなどの症状が見られ、原因は外的因子と内的因子に分けられます。外的因子は化学物質、薬剤、金属、植物や虫、ハウスダストなどのアレルゲン、日光など、内的因子はアレルギー体質、アトピー素因、皮膚のバリア機能低下、ストレスなどが挙げられます。多くの場合はこれらが組み合わさって複合的な原因となっています。
湿疹(皮膚炎)を起こす代表的疾患として以下のものがあります。

皮脂欠乏性湿疹

乾燥することにより皮膚のバリア機能が低下し、カサカサの状態(乾燥肌・乾皮症)から湿疹を生じる疾患です。
発症する背景として、季節(秋冬は空気が乾燥することで、夏は汗をかくことでバリア機能が低下します)、年齢(小児と高齢者は皮脂分泌量が少ないために肌が乾燥しやすい状態です)、生活習慣(洗い過ぎなど)、アトピー性皮膚炎や糖尿病などの持病などが挙げられます。

手湿疹

皮脂欠乏性湿疹と同様に皮膚のバリア機能が低下することにより起こる疾患ですが、特に手洗いや水仕事、紙に触る作業をする方などに多く見られ、皮脂の欠乏と慢性的な物理的刺激が原因となり、手に湿疹を生じます。

かぶれ(接触性皮膚炎)

外的因子が肌に触れることで生じる皮膚の炎症を、一般的にはかぶれ、正式には接触性皮膚炎といいます。上に挙げたように、原因となる物質は非常に多岐にわたります。
発症の初期では正常な皮膚との境界が比較的はっきりしていることが特徴です。

治療について

原因が特定されている場合は、それを除去する環境を整えます。塗り薬は保湿剤を基本として、ステロイド系外用薬の種類を症状の強さや部位に応じて調節します。かゆみが強い場合には抗アレルギー薬の内服も行います。

アトピー性皮膚炎

強いかゆみを伴う湿疹が体中で見られ、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら慢性的な経過をたどります。多くの方が、喘息やアレルギー性鼻炎などの疾患、アレルギー体質、それらの家族歴を背景に持つとされています。
生後2か月ごろから発症し、乳児は顔や頭部からはじまり、体と手足に湿疹が広がります。1歳を過ぎるころには首回りや手足の屈曲部にカサカサと乾燥した湿疹が現れるようになります。成長に伴い治癒する場合もありますが、成人になっても症状が継続する方も少なくありません。思春期から成人では上半身(顔、首、胸、背)に症状が強い傾向があります。

治療について

アトピー性皮膚炎を完治させることは現時点では難しく、対症療法が中心となります。
当院では日本皮膚科学会の治療ガイドラインを遵守し、症状が出た時だけではなく、予防的治療をベースとした「プロアクティブ療法」を治療計画の基準とします。
アトピー性皮膚炎では「かゆみ」「皮膚のバリア機能異常」「アレルギー性の炎症」の要素が互いに関連しながら進行します。特に、かゆみに耐えきれず掻きむしると急激に悪化してしまうため、これらの要素を抑える治療を行います。
スキンケアは全ての治療ステージで基本となるため、保湿剤を常に十分に使用します。
炎症を抑える外用薬としてはステロイド外用薬が代表的で、強さのランクによって様々な製品があり、症状の強さ、部位、使いやすさなどに応じて、処方を調節します。
その他の抗炎症外用薬として、カルシニューリン阻害外用薬(タクロリムス軟膏)や、近年開発された比較的新しい薬剤である、JAK阻害外用薬(デルゴシチニブ軟膏)、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害外用薬(ジファミラスト)があり、症状を見ながらステロイド外用薬との併用、切り替えを行います。
強いかゆみが収まらない場合には、抗アレルギー薬の内服薬も用います。
近年、JAK阻害薬の飲み薬、生物学的製剤の注射剤など様々な新薬が開発されていますが、対象年齢や使用条件、施設が限定されます。
新薬の最新情報を常に入手し、当院でも扱えるものは積極的に導入を検討して参ります。

ニキビ

ニキビは、顔や胸、背中などで毛穴が詰まり、細菌が増えることで炎症が起こる状態です。医学的には「尋常性ざ瘡」と呼ばれます。

思春期には、アンドロゲンと呼ばれる男性ホルモン(女性にも分泌されます)によって皮脂の分泌が増加し、毛穴が詰まり易くなります。毛穴が詰まった状態を面皰(めんぽう)と呼び、内部では皮脂を好む皮膚常在菌(アクネ菌)が増殖し、炎症を引き起こします。成人期でも生活習慣の乱れなどから発症することがあります。

症状としては、炎症によって赤く盛り上がる丘疹、膿疱、のう腫、しこり(結節)などが現れます。また、繰り返し発生したり、悪化して長期化すると、瘢痕によるニキビ痕が残ることもあります。

治療について

日本皮膚科学会のガイドラインに従います。赤い、膿が出る、などの感染が疑われるニキビには抗生剤の塗り薬、飲み薬を中心に治療を行いますが、漫然と抗生剤を使用し続けることは耐性菌を生じるリスクもあるため、推奨されません。ある程度症状が改善した段階で、毛穴の詰まりを改善する効果のある、過酸化ベンゾイル(アクネ菌への殺菌作用もあり)、アダパレンや、これらの配合剤に切り替え、肌を良好な状態に保って再発を予防します。
湿疹の治療と同様に、保湿は常に重要です。

タコ

タコは、物理的な刺激を長期にわたり受け続けた結果、皮膚の角質が厚く固くなった状態です。医学的には胼胝と呼ばれます。
原因としては、歩行時の癖、サイズの合わない靴、長時間の正座(座りダコ)などが挙げられ、ペンダコのように生活や仕事の習慣に起因するものもあります。痛みはほとんどなく、足にできると、靴の中で異物があるような感覚が生じることもあります。

治療は、肥厚した角質層を取り除くことです。慢性的な刺激を避ける環境の整備や対策も重要です。除去には液体窒素やCO2レーザーが使われることもあります。また、サリチル酸を塗布して角質を軟らかくしてから除去する方法もあります。
当院では習熟した外科技術を生かし、メスやカミソリで薄く丁寧に削り取る治療も可能です。

ウオノメ

ウオノメは、物理的な刺激が続くことで、角質層が真皮方向に肥厚化し、核(芯)が形成された状態です。その様子が魚の目に似ていることから魚(ウオ)の目と呼ばれるわけですが、医学用語では魚ではなく鶏の目、「鶏眼」と呼ばれます。
タコと同様、慢性的に1点に集中した刺激、荷重が原因となりますが、特に骨が突出した部位を中心に発生しやすく、肥厚した角質と骨に挟まれた皮膚が痛みを伴います。

治療もタコと同じく、まずは慢性的な刺激を避けるための対策が必要です。
しかし、タコの治療と異なる点は、芯の部分を除去しなければ痛みはおさまらないということです。小さな芯をくり抜くように正確に除去するためにはさらに技術が要求され、特別に細いメスや器具の扱いに慣れた形成外科医が得意とする手技です。

イボ

医学用語では疣贅と呼び、最も高頻度に見られる、ウイルスによるイボは「尋常性疣贅」と呼ばれます。特に小児に多くみられます。ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚の小さな傷から侵入し、手や足などに小さくやや平らに盛り上がった、表面がザラザラしたできもの(数㎜~1cm程度)を作ります。単発の場合もあれば多発することもあります。
見た目以外に痛みやかゆみはほとんどありませんが、放置すると別の部位に感染し、イボが増えることがあります。
最も一般的な治療法は、液体窒素による凍結療法です。多少のチクチクとした痛みは伴いますが、基本的に麻酔無しで施術可能で、1週間から2週間に1回の間隔で継続し、完治までには複数回の実施が必要です。
大きく深いものほど治療が長期化しがちな疾患ではありますが、当院では漫然と治療を行うことなく、表面の角質は出来るだけ薄く削ってから処置することを心掛け、確実に病巣を凍結させて短期間で完治させられるよう努めます。
他の治療法としては、漢方薬であるヨクイニンの内服や炭酸ガスレーザーや手術で切除する方法もあります。

ジンマシン

突然、皮膚の一部が赤くくっきりと盛り上がり(膨疹)、しばらくすると跡かたなく消えてしまう病気です。通常は数時間から24時間以内に消失します。原因はアレルギー、物理的な刺激などで特定できることもありますが、約7割のケースでは原因が不明な特発性ジンマシンです。
治療としては、原因が分かっている場合は、それを避けるように環境を整えます。必要に応じて、原因特定のための検査(血液検査、プリックテスト 等)を行うこともあります。症状に対しては、抗アレルギー薬を内服します。

水虫

白癬菌(カビの一種)が足に感染し、発症した状態が水虫です。医学用語では足白癬と呼びます。感染経路としては、足ふきマットやサンダルの共有などが挙げられます。
水虫は主に3つのタイプに分かれます。趾間型は、足の指の間で発症し、ジュクジュクしてかゆみを伴います。小水疱型は、土踏まずや足の側縁、足趾基部に小さな水疱や膿疱ができ、かゆみと共にカサカサします。角質増殖型は、踵の角質が厚くなるタイプで、痛みやかゆみはほとんどありません。足白癬から爪にも白癬菌が感染することがあります(爪白癬)。

治療は、抗真菌薬の外用薬を使用します。角化型や爪白癬では薬剤が浸透しにくいため、抗真菌薬の内服も推奨されます。予防のためには、足を清潔に保つことが大切です。

ヘルペス

単純ヘルペスウイルスに感染することで皮膚や粘膜などにブツブツや水ぶくれができる病気です。単純ヘルペスウイルスは一度感染すると神経節に潜伏し、疲労やストレス、月経などが誘引となってウイルスが再び活動することで再発します。多くの場合はブツブツや水ぶくれができる前に、チクチク・ピリピリとした違和感や痒みを自覚します。発症する部位により、「口唇ヘルペス」と「性器ヘルペス」に分類されています。

再発性ヘルペスに対するPIT療法(Patient Initiated Therapy)

あらかじめ、医師から処方された薬を、違和感が出てきた段階で、患者様自身の判断ですぐに服用する治療法です。⽔ぶくれなどの症状を軽減したり、症状が出ずにすむ場合もあるので、治癒までの期間を短くすることができます。
問診、経過観察に基づいた医師の判断が必要となるため、まずはご相談ください。

帯状疱疹

水ぼうそうを経験した方が発症する病気で、原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスは、症状が治まった後も神経節に潜伏し、免疫力が低下すると再活性化して帯状疱疹を引き起こします。
症状としては、神経に沿ったピリピリとした痛みや感覚障害があり、その後、痛みがある部分に赤みや水疱、膿疱が出現し、かさぶたが形成されます。かさぶたが剥がれ落ちると治癒し、通常は3週間程度で治りますが、皮膚症状が治まった後も神経痛が続くことがあり、3ヵ月以上続くと帯状疱疹後神経痛と診断されます。

治療は抗ウイルス薬を内服します。通常、5~7日間程度続ける必要があります。痛みが強い場合は、鎮痛薬や神経ブロックを使用することもあります。

脂漏性湿疹

乳児や思春期から成人まで幅広く発症し、脂漏性皮膚炎とも呼ばれます。皮脂の過剰分泌と皮膚常在菌マラセチアの関与で、炎症が引き起こされるとされています。
乳児では、生後2~4週間後におでこや頭部に黄色いかさぶたができ、やがてそれらが剥がれ落ちます。特に治療を行わなくても、1歳頃には自然に治癒することが一般的です。
成人期の脂漏性湿疹(思春期以降40代までの男性に多く見られる)は、頭皮や顔面、胸部、腋の下、背中などに発生します。フケのようなものが頭皮から慢性的に落ち、鼻や頬には赤い発疹が現れることがあり、症状は慢性化し、良くなったり悪くなったりを繰り返します。
乳児の場合は、特別な治療は必要なく、黄色いかさぶたを無理に剥がさないように注意して経過観察します。皮膚症状が強い場合には、弱いステロイド外用薬を使用することがあります。
思春期以降の場合、まずは石鹸やシャンプーで清潔を保つことが重要です。皮膚に症状が見られる場合、ステロイド外用薬を使用することがあり、また、マラセチア属真菌が関与している場合には抗真菌薬外用薬が使われます。

円形脱毛症

髪の毛の一部が比較的急性に抜け落ちて、円形の脱毛斑が現れるのが特徴です。単発の場合もあれば、多発することもあります。脱毛斑が広がり、全頭の髪が抜ける、さらには全身の体毛が抜けることもあります。原因は自己免疫反応やストレスの関与が考えられていますが、これらとは無関係に発症することもあります。
脱毛斑が小さい場合、特に治療をしなくても数ヵ月で自然に回復することもあります。範囲が広がる、または複数の脱毛斑が見られる場合、ステロイドやカルプロニウム塩化物の外用薬が使用されます。急速に広範囲に脱毛が進む場合には、ステロイドパルス療法や内服ステロイド薬が使用されます。その他、グリチルリチン・グリシン・DL−メチオニン配合剤錠の内服など炎症を抑える治療や、セファランチンの内服、液体窒素療法などが一般的に行われています。